2017年2月9日木曜日

【漫画読んだ日記】「悪魔の誘惑」(綾部 瑞穂・デブラ・キャロル)(悪魔は元夫と姑)

綾部 瑞穂・デブラ・キャロル
「悪魔の誘惑」 



ハーレクインコミックスです。

とにかく腹の立つ話です。

ヒロインである、エマ・ジョーダンの夫、ラリー(故人)が、ハイレベルの事故物件で、死んでいるのもお構いなく、殺意がわくような人物です。

簡単に説明すると…

ラリーは世間的には理想的なセレブ男子で、容姿も人柄もすばらしく、エマを始めとして、彼を心から慕う人々に囲まれて暮らしていました。

ところが、ラリーは自動車事故に巻き込まれ、燃えさかる車体に体を挟まれ脱出できず、焼死してしまいます。

深い悲しみのなかで、夫が会社に残していた遺品の整理をしていたエマは、とんでもないものを見つけてしまいます。

夫ラリーは、取引先の会社の社長夫人と、長期にわたって不倫関係にあり、あろうことか、二人の合体場面をこまめに動画に撮って、ホームビデオのディスクに保存していたのです。

さらに、エマは妊娠を切望していたのですが、ラリーは二人の間に子どもを作る気は全くなかったようで、精管切除の手術まで受けていました。

つまり、ラリーは、最愛の社長夫人との不倫をカモフラージュするためだけに、十歳も年下のエマをひっかけて、形だけの結婚をしながら、不倫行為の映像をたくさん撮り溜めして、会社にコレクションしていたわけです。

ラリーとエマの出会いは、エマが十七歳の時だったといいますから、ほとんど犯罪みたいなものです。不倫をごまかすためだけに、女子高生を引っかける二十七歳男性とか、気持ち悪いの一言です。あるいは、そういう異様な状況そのものを、楽しんでいたのかもしれません。いずれにせよ、事故死は天罰みたいなものでしょう。同情の余地はありません。

最愛の夫の正体を知ったエマは、深く傷つきますが、周囲にはラリーの崇拝者しかいませんから、本心を誰にも打ち明けられないまま、田舎に引きこもって、自らの心の傷を映したような恐ろしい物語を書く小説家になります。

ところが、ラリーの母親は、死んだ息子を神格化する勢いの溺愛ぶりで、未亡人となったエマの人生を管理し、生涯ラリーの未亡人として生きるように、強要しつづけます。もちろんこの母親は、エマの小説家としての成功など、全く評価せず、軽蔑しきっています。さらにおぞましいことに、この母親、エマの周囲に男性の姿が見えた途端、牽制のつもりでしょうか、エマの家に無断で入り込み、亡き息子の肖像画を飾り付けたりするのです。こんな母親だから、息子も変態になるのかもしれません。


エマの小説は大ヒットして、サム・クーパーという演劇人によって映画化されることになり、そのサムがエマを愛することで、物語はハッピーエンドを迎えるわけで、物語の本筋はサムとエマの恋愛なのですが、ラリーとその母親があまりに気持ち悪すぎて、サムの印象がイマイチ薄く、ずっとエマのトラウマに振り回されっぱなしだったこともあって、最後まで、あまりステキにも見えませんでした。ちょっと気の毒なヒーローです。


というわけで、コミック作品自体は、いまいち好印象ではなかったのですが、作者の綾部瑞穂さんのあとがきが、ちょっと面白かったです。

原作を読了した後、作者さんは、アン・ライスの「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」を思い浮かべたそうです。

私は原作小説は読んでいませんが、トム・クルーズとブラッド・ピットが出演した映画は見ました。独特の退廃と倦怠、ゴシックな美しさと救いのなさを漂わせた、濃厚な作品で、強い印象が残っています。

コミックスでは、健全な印象ばかりで、どうにもパッとしない存在だった(失礼…)、ヒーローのサム・クーパーを、「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の妖艶なレスタト(トム・クルーズ)に重ね合わせると、作品の印象は、大幅に変わります。


デブラ・キャロルの原作小説も、読んでみたくなりましたが、残念ながら、まだkindle化されていないようです。










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