2018年2月6日火曜日

なんとなく辞書を引く「おかあさん」



Twitter等で、「あたしおかあさんだから」という歌がものすごく批判されているのを見た。

意見はいろいろあるけれど、ここではそれを書くことはしない。

それよりも、作詞された方が、「ママ」ではなく「おかあさん」を選んだのが興味深いと思った。

「あたしママだから」と「あたしおかあさんだから」を比べると、少し改まった感じがある分だけ、後者のほうが、母親としての責任感や自負を抱いているような印象がある。


そういえば、梓みちよの「こんにちわ赤ちゃん」では、「わたしがママよ」と歌われていたっけ。









このレコード、うちにあったなあ。
B面の「いつもの小道で」も、よく覚えている。繰り返し聞いたから。

しかし私の幼児期(昭和四十年代)には、母親を「ママ」と呼ぶ子供はほとんどいなかった。みんな「おかあさん」もしくは「かーさん」「かーちゃん」だった。幼稚園のクラスでは、「ママ」を使うのは私一人だけだったし、小学校にあがってもそうだった。

時代が変わって平成にになり、うちの子供たちがまだ小さかったころには、同世代の子供たちは、母親のことを「ママ」と呼んでいることが大半だったと思う。「おかあさん」は少数派、「かーちゃん」はほとんどいなかった(少数いた)。

ちなみにうちの子供たちは私のことを「おっかあ」と呼ぶ。

完全にマイノリティである。なにしろ、うちの他に「おっかあ」など呼ぶ子供に出会ったことかない。

子供たちも、対外的には「おかあさん」「母」を使用しているようだけれど、「ママ」と呼ばれた(言われた)ことは一度もない。


んで、ふと思いついて、学研国語辞典(初版)で「おかあさん」を引いてみた。





おかあさん【お母さん・御母さん】(名) 

{明治末期以後、「お父さん」とともに国定教科書にとりあげられ、一般化した語} 
子供が自分の母親を敬い親しんで、それに呼びかけるとき、また指示するときに用いる語。 
{子供以外の人が母親の立場にある人を敬い親しんで、それに呼びかけるとき、また指示するときにも使うことができる。また、母親が子供に対して自らを指して言うこともある。} 
…口語では、母親の意を表す類語の中で、最も標準的な言い方とされる。自分の母親を指して、対外的に用いるときは「母」がより標準的な言い方とされる。
「(子ガ母ニ)おかあさん、ごめんなさい」
「(子ガ)おかあさんは私にいつも優しかった」
「(子ノ友達ガ)彼のおかあさん、病気なんですって」
「(夫ガ妻ニ)おかあさん、もう一本つけておくれ」
「(母ガ子ニ)おかあさんの言うことをよく聞くのよ」 
…お母さま。母さん。母ちゃん。おっか(さん)。ママ。母。母上。おふくろ(さん)。




「敬い親しむ」といわれると、そこまでの気持ちがあるんだろうかと思わなくないけれども、実の母親を「ババア」などと呼びつけることと比べれば、「敬い」の気持ちはたしかにあるのだろう。


それにしてもこの辞書の例文、ちょっとひどくないだろうか。



「(子ガ母ニ)おかあさん、ごめんなさい」

叱られて謝ってるらしい。


「(子ガ)おかあさんは私にいつも優しかった」

おかあさん、亡くなってるっぽい。(´・ω・`)


「(子ノ友達ガ)彼のおかあさん、病気なんですって」


わざわざ病気にしなくても。


「(夫ガ妻ニ)おかあさん、もう一本つけておくれ」

いまだと夫が批判あびそう。それに一昔前だとしても「~おくれ」という夫がどれほどいただろうか。


「(母ガ子ニ)おかあさんの言うことをよく聞くのよ」


リアルに自分の子供にこんなこという母親、いるだろうか。


学研国語大辞典、初版が刊行されたのは、1978年である。
高校のころに買ってもらって、読むのが楽しくて、毎日持って登校していた。
(その他に古語辞典、漢和辞典、英和辞典も持ち歩いていた。あの体力はいまどこに…)



いまとなっては、だいぶ古い辞書だ。
例文が古いのも、しかたがないか。 (´・ω・`)




そういえば、広辞苑の第七版、ずいぶんハデなデザインになったなと思ったら、電子辞書のパッケージだった。




紙の辞書、老眼のせいで読むのが厳しくなってきているので、ちょっと心引かれるけど、十年後にPCのOSやら機種やらが変わっても使えるのかしらと思うと、手を出す気になれない。


それにしても「広辞苑」、レビューでだいぶ叩かれている。
語釈のミスと、政治的な公平性を欠く記述があったのだとか。
難しいな、国語辞典も。






2018年2月5日月曜日

なんとなく辞書を引く「あかんべ」


机の下にあった学研国語大辞典(初版)が、ほこりをかぶっていたので、はらうついでに箱から出して、開いてみた。

目についた言葉を引用してみる。



あかんべ 《名》 (「赤目」の転) 
指で下まぶたをひき下げ、赤いところを見せること。また、それと同時にいうこば。小さい子供をからかったり、あるいは、けいべつ・拒否の気持ちを表したりする動作。あかんべい。あかんべえ。あかべ。 
「舞ふかと思たら、嬢さんの前で、あれ、まあ、あかんべをする。いやなお猿〈与謝野晶子・詩・お猿〉」





与謝野晶子の詩というと、「君死にたまふことなかれ」ぐらいしか知らなかった。

青空文庫に収録されている「晶子詩篇全集」には、「お猿」という作品が見つからないようだ。

読めないとなると、余計に気になる。


もうちょっと検索してみたら、下総皖一という人が、与謝野晶子の「お猿」という詩に曲をつけたという情報が見つかった。混声合唱曲らしい。

与謝野晶子 誰がどの詩に作曲したか
http://www.geocities.jp/scaffale00410/yosano_akiko1.htm



曲であるなら、聞いてみたい。
けれともYoutubeなどには、この曲の動画が見当たらない。


いろいろ調べて、楽譜の存在は確認できた。


混声合唱曲集(第1集~第10集)
下総皖一編
音楽之友社, 1950-1958

この曲集の最後に掲載されているようだ。


あちこちの大学の付属図書館などに収蔵されているようだけど、簡単に見られそうにない。


下総皖一の曲には「たなばたさま」など、有名なものがたくさんあって、いまでも歌う人がたくさんいるけれど、「お猿」はなかなか選ばれないようだ。






ネット情報が氾濫している時代だけど、開示されているはずの情報ても、ネットだけでは調べられないことは、まだまだある。著名な歌人の作品であっても、こんなありさまだ。

楽譜か手元にあったら、著作権切れの歌詞、書き写すのに。(´・ω・`)


ちなみに与謝野晶子作詞の「お猿」は、JASRACの作品データベース検索では、出てこなかった。

http://www.jasrac.or.jp/

http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/main.jsp?trxID=F00100