宇宙を駆けるよだか 1 川端志季 (著)
(マーガレットコミックスDIGITAL) Kindle版
容姿と性格が正反対の少女二人の人格が、入れ替わってしまうお話です。
強い容姿コンプレックスのために性格がねじまがり、恨みや妬みにまみれて生きていた然子は、とある呪術的な方法で、美しいクラスメート、あゆみの人生を丸ごと奪うことに成功します。
あゆみの彼氏に片思いをしていた然子は、まんまとその彼氏と付き合うようになったばかりか、クラスメートにあゆみ(外見は然子)の悪口を流して、村八分にしようと画策。
一方あゆみは、家族からも友人たちからも切り離されて、絶望の淵へ…
という、あらすじだけ見て、胸くそ悪いお話なんだろうなと思ったのですが、たくさん寄せられているレビューが、「読後の後味がいい!」というような、好感度の高いものばっかりだったので、つい読んでみることに…。
ほんとうに、ハッピーエンドでした。
ただ、何かこう、喉に小骨がひっかかるような感じが残るお話ではありました。
愛された経験のない、気の毒な育ちだったとはいえ、然子の存在は、ほとんど生きた地雷でしたし(踏んだら終わり)、その所業も殺人に等しいものでした。もくろみが完全に成功していれば、あゆみや、あゆみを守ろうと奔走したおさななじみ二人の人生も、破壊するところでした。
けれども然子は、自分が陥れて一方的に苦しめたあゆみたちに救われて、彼らの無償の理解と友情まで受け取っています。
そこのところに、なんだか、バランスの悪さを感じてしまうのは、読み終わっても、然子にほとんど好感が持てなかったからかもしれません。
もっとも、然子のなかに、ほんのちょっとでも好感が持てるような、ポジティブな要素があったなら、あんな陰湿な事件を起こすこともなかったのでしょうけども。
うーん、後日談をもう少し読みたい気がする作品でした。