2018年3月26日月曜日

「百年泥」の「脱翼」を「脱糞」と読んだ人々


ちょっと前に、芥川賞受賞作「百年泥」を、Kindle版で読みました。
第158回 芥川賞受賞作品なのですが…

石井遊佳 「百年泥」

                 
かなり私好みの面白い作品でした。

もうずいぶん前に、笙野頼子「二百回忌」を読んだときと同じくらい、ワクワクしました。(何年前の芥川賞だったっけ…)


ただ、この作品、小説の前半にちょっとした地雷があるのです。

以下、二カ所の地雷を、私の目が「読み取ったそのまま」に、引用させていただきます。
(作品本文とは一部異なっていますので、ご注意ください)



たいてい毎朝九時ごろ、すでに三十度をはるかに超える酷暑の仲を私は会社玄関に到着する。その時ちょうど前方で脱糞した人を見ると副社長で、

「おはようございます」

あいさつすると大柄な彼は私にむかって愛想よく片手を上げた。



もう一つ。


私がカールティケーヤン氏と対面しているその間にも急角度でまた別の役員が到着、着地と同時に背中に両手を回しすばやく脱糞するや、吸い殻をすてるように中指と薬指に太いゴールドの指輪のはまった手が大きな翼を放り出し、心得た係員は両翼を一動作で干場に置く。



さらに、これらの地雷を補強するが如き会話文が、後半に出てきます。
これです。


「ああいいともさ、余裕ったらないね。きのうネット見たら飛翔通勤の権利がオークションに出てたぜ、衝突軽減ブレーキ搭載の主翼二セットと補助翼こみで、今朝みたらもうアショークナガルに家二軒買える値段になっちまってたけどな、結構な世の中だね、晴れておれがお買い上げのあかつきにはお前に空から一発おみまいしてやる
「何がおみまいだよ」
朝、トイレがまんしといてよお
「きったねーこの野郎!」



「脱翼」「脱糞」と見間違えたのは、確実に私の老眼およびかすみ目が影響していますけれど、その見間違いに首をかしげつつも、作品読了まで「脱糞」だと信じて疑わなかったのは、「お前に空から一発おみまい」の補強文脈があったからに他なりません。だって、途中かすかにうずいていた疑いの気持ちは、この一発で完全消去されましたから。(´・ω・`)




読了したあと、ものすごい作品が芥川賞を受賞したんだなあ、ちまたの感想はどうだったんだろう、とくに「脱糞」について、いろいろ言われていないだろうかと思いながら、googleで、


百年泥,脱糞

をキーワードに検索したところ、やはりこの単語について取り沙汰しているブログが複数見つかり、しかも「脱糞」ではなく「脱翼」だったということが分かって、えええええええっとなった次第です。orz


この際ですので、心からの親近感を込めて、「百年泥」の「脱翼」を「脱糞」と読んだ方々のブログを集めてみました。(すみません)



会社玄関で脱糞?「百年泥」の魔法 (流す日々)
https://ameblo.jp/eternalkey-evergreen04-d/entry-12352630481.html

「百年泥」「脱糞」でgoogle検索して、現在トップに出てくるのが、こちらのブログ。
見つけたとき、自分だけではなかったことに、とても心強く思いました。(^_^;)


百年泥・その他 (湯飲みの横に防水機能のない日記)
http://dakkimaru.hatenablog.com/entry/2018/03/19/122404
ブログを書いたあとで読み間違いに気づき、修正しています。



ありがとう。おかげで芥川賞が取れたよ。それにしてもきたねえ。 
- 小説「百年泥」(石井遊佳・インドチェンナイ)
(ぐりぐりももんがのうんちくゲレンデ行脚&地方応援ブログ)
https://alpine-ski-slope.blogspot.jp/2018/02/blog-post_24.html


こちらのエントリーのタイトルは、作者が文藝春秋のインタビューで最後に放った言葉だとのこと。インタビュー記事、読んでみたくなりました(^_^;)。作者さんのお人柄が、興味深いです。



名作の楽しみ-263 第158回芥川賞受賞作品 石井遊佳「百年泥」(松尾文化研究所)
https://blogs.yahoo.co.jp/mamatsuo3304/56026982.html

こちらのブログ主さんは、「脱糞」のまま読了して、いまだに読み間違いにお気づきでない様子で、次のように書かれています。


日本文学の伝統の私小説化と思いきや、企業のお偉いさんは空を飛んで出勤、会社に着くとその駐車場で脱糞。なんじゃこれはと思う間もなく、日本での自分の生い立ちや結婚、離婚などの状況が説明されながら、洪水後の状況が描写されていく。


わかります。私もそう思いましたから。なんじゃこれはと。(^_^;)



ありえた世界が百年泥に埋まっている 石井遊佳「百年泥」 (梟通信~ホンの戯言)
https://pinhukuro.exblog.jp/27013564/


こちらのブログ主さんも、「脱糞」のまま読んでおられます。(T_T)


「百年泥」 (つぶやきのページ)
http://stationtraintown.blog.so-net.ne.jp/2018-03-17


こちらのブログ主さんは、誤読に気づかれていますが、やはり「脱糞」の印象が強烈だったようで、この語が出てきたあと、「それ以降、この本は現実的な話ではないのかなあ、と一歩引いて読んで」しまわれたとのこと。



とにかく忘れられない作品の一つになったことは間違い有りません。
作者さんの次回作を心待ちにしています。
次はどんなものすごいインドが現れるのか(インドが舞台だろうと決めてかかっている)






蛇足ですが、笙野頼子「二百回忌」は、他の作品と合わせてKindle化されていました。



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