藍 まりと(漫画) ・アン ・メイジャー(原作)
「アマルフィの花嫁」
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ヒロインのレジーナは、自分の生まれ育った家庭に居場所を見つけられず、家族愛に飢えています。
父親はレジーナを「いらない娘」であるといって妹ばかり可愛がり、その妹はレジーナの恋人を略奪して結婚、出産して、悪びれもしないのですから、そりゃ飢えもするでしょう。
なんかハーレクインって、こういう鬼畜な一般家庭が、成育歴の背景にあることが、ものすごく多いですね。(´・ω・`)
男運にも見放され、自然な結婚は到底望めないと思い込んだレジーナは、自分と同じ女性弁護士である友人と一緒に、人工授精で子供を産むという計画を立て、実行に移すことに。
家族は大反対しますが、そもそも家族がレジーナの気持ちを顧みない仕打ちをつづけたせいですから、「おめーらが言うな」という感じで、レジーナには聞く耳などありません。
で、人工授精家族計画を実行する直前、レジーナは旅先のアマルフィで、生まれて初めて強い恋心を抱かせてくれるような男性と出会います。
けれどもその彼は、質素な身なりであるのに、なぜかセレブな年上マダムたちに可愛がられ、どうやら彼女たちと特別な関係を結んでいる様子。
彼はジゴロであるのに違いない、と思ったレジーナの男性を見る目のなさが、二人を結びつける赤い糸になるわけですが……
レジーナは敏腕弁護士のはずなのですが(そういう設定)、自分に関わる周囲の人々を見定める目が、どうしようもなく節穴であるという、残念なマイナスの才能を抱えています。
自分のことを愛してくれる人なんていない、いたとしても、それはろくでなしに違いない…という、極端な認知のゆがみがあるのは、家族による心無い仕打ちの影響でしょうか。
間違った育児、家族によるモラハラが、不幸の苗床だなと、つくづく感じさせられます。
その結果、こういう水戸黄門の印籠見せつけられたような状態に
かなり原作の要素を端折っているコミック版でも、途中に彼の素性を推測させてくれるようなヒントはいくつもありましたから、冷静だったら、普通間違えないと思うんですよね。
このあと、公爵はレジーナと別れ、母親が独断で強引に決めた再婚相手(前妻は死亡)との婚約発表をします。
レジーナは帰国して弁護士生活に戻りますが、公爵の子供を妊娠していることがわかり、パニック状態で公爵に電話したものの、時差で向こうが真夜中であることに気づいて、話もせずにガチャ切り。
シングルマザーとして生きるしか道がないところに、上司の心無い営業方針にブチ切れして、勢いで退職。
見る目のなさといい、後先考えない衝動性といい、かなり困った女性であります。
そんなわけで、途方に暮れているところに、完全に沸騰した状態の公爵が渡米して押しかけてきた上、怒りに任せて恐喝同然のプロポーズをかまし、そのままレジーナをイタリアに拉致。
公爵のほうは、諸々の状況に対する誤解から、自分がレジーナにハメられたと思い込じゃったわけです。
公爵は、その後頭が冷えて、自分は騙されたわけではないのではないかと気づいたものの、結局ろくに話し合いもしないまま、レジーナを追い返します。
大人なんだから、きちんと話し合いをしろと。(´・ω・`)
この公爵という人も、かなり問題アリな性格です。
それまでの人生、家柄だの親の意向だのに従うばかりで、自分の意思のままに生きたことがなかったため、他人と対等な信頼関係を結ぶスキルというものが育ってなかったんですね。
でもまあ、間に入ってくれる人(公爵の祖母)がいたため、なんとか丸く収まることに。
最愛の人の母親と祖母を、そろってジゴロの客だと思い込んで、公爵一族を大スキャンダルの渦中に放り込んだわけですから、レジーナさんは、嫁としてはかなり立場が危ない感じですが、そこはハーレクインですので、完全なハッピーエンドで終わります。
ラブストーリーというよりも、成育環境としての家庭のありかたの大切さを教えてくれる作品という印象でした。
ちなみに、タイトルのアマルフィは、イタリアの観光都市で、中世には強く栄えた海洋国家だったとのこと。
うつくしいですね。
漫画のなかにも風景のシーンが少し出てきますが、こうしてきれいな写真を見てみると、物語の印象が、だいぶ変わります。
お話の中のレジーナみたいに、美しい景観と歴史にあこがれる外国人が、たくさん観光に行くのでしょうね。
とはいえ、地震大国日本出身の人間としては、崖に林立するレンガ造りの家とか、海岸線ぎりぎりの街とか・・・ちょっと、住みたくない感じではあります(ロマンぶち壊しの感想)。
ハーレクインコミックス感想一覧
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